放射線効果を制御する放射線場を形成する

サイクロトロン加速器を用いた熱外中性子源

 京都大学複合原子力科学研究所と住友重機械工業は、サイクロトロン(30MeV・1mA陽子ビーム)とベリリウムターゲットを組み合わせた加速器BNCTシステム(Cyclotron-Based Epithermal Neutron Source: C-BENS)を開発しました。医療機器承認が得られた世界で唯一の装置であり、再発性脳腫瘍(治験終了)や頭頚部がん(保険診療開始)に対する臨床試験を行っています。近年では様々な中性子発生方式による治療システムの開発が進んでおり、BNCT用中性子照射場の開発・改善に関する検討を行っています。

放射線の生体への作用を知る

簡便・高精度な品質管理プログラムの確立

 放射線治療を行う上で、治療の有効性・安全性を確実に保証するために、定期的な評価試験、すなわち治療の品質保証(Quality Assurance: QA)、品質管理(Quality Control: QC)が重要です。QA/QCにおいては、初診から治療後までの各段階で、様々な評価項目が存在しますが、特に重要となるのが患者に付与される線量評価です。本研究室では、線量評価に使用するため、リアルタイム中性子・ガンマ線検出器や新たなシンチレータ検出器、中性子線量率モニターなどを開発しています。

ホウ素濃度のリアルタイム測定

 BNCTではホウ素薬剤を患者に注入しますが、腫瘍や正常組織に集積するホウ素濃度をリアルタイムで測定できるシステムは未だありません。そのためホウ素の核反応により生じる即発ガンマ線を用いて、ホウ素濃度の空間分布をリアルタイムで測定可能な即発ガンマ線テレスコープシステムを開発をしています。

 

医学と連携して放射線治療をサポートする

照射、治療計画の高度化

 加速器中性子源を用いたBNCTは、「切除不能な局所進行又は局所再発の頭頚部癌」を対象として医療機器として承認され、現在は保険適応となっています。今後加速器BNCTを実施する施設の増加が見込まれますが、適応症例の拡大や治療効果の向上が課題となります。そこで、本研究室では、表層の悪性腫瘍に対応するためのボーラスの開発、深部への線量付与を可能とする多門照射について研究を行っています。また治療計画の最適化や線量評価の高精度化を目指して、新しい線量計算アルゴリズムを用いた治療計画の高速化や照射位置モニタリング技術を開発しています。